変人ホイホイで集めた変人と「出る杭」を育てる

「巫女みたいになっちゃうんですよ、仕事だけやってると」

と東京や上海、香港などに事務所を構えるデザイン会社「グランドデザイン」代表の西克徳さん。

企業から依頼される商業デザインの仕事は、その企業の目指すことを「クリエイティブ」に落とし込みます。商品の魅力的を絵や映像で伝えるなど、創造力がないとできない仕事です。しかし、仕事の最適解をみつけるのは、自分の作品を作ることとは違います。自分が透明になる、個が無くなっていく危険性があります。

デザイナーは「絵をプレゼントして喜ばれた」など、作ることがとても好きでその業界に入ってきています。日々の業務に忙殺されると(もちろん仕事が面白いから夢中になってやっているのですが)、個人的に好きなことが後回しになり、薄まっていきます。しまいには、お告げを他の人に伝える巫女のようになってしまうのだといいます。

グランドデザインでは、この状況に陥らないよう、社員は仕事とは全く関係ない、自分の好きなことをする個人プロジェクトを進めています。大好きなおじいちゃんの絵を書くのが好きな人は個展も開催。おじいちゃんのお友だちも見に訪れました。

課題を解決したがる変人たちと、環境を変えたくない大人たち

近未来ハイスクールに登場する個性的な変人たちは、仕事が大好きな人ばかりです。最初から大好きなことを仕事にしている人もいますし、与えられた仕事に全力で取り組んでいたら大好きになってしまった人もいます。いずれも楽しみながら自らが変化を続け、身近な周りをより良い方向へ進めるために変化を起こし続けています。

一方で、国立高校 生物教諭の大野智久さんが指摘するとおり、下記の状況になるケースが少なくありません。

僕のイメージでは、「変人」とは、「課題発見が得意で、発見した課題は解決せずにはいられなくて、そのために色々なアイデアを出して、必要に応じて協働して、というように、常に”面白いこと”をやり続けている人」です。
これは、経産省が「未来の教室」事業で掲げている「チェンジメーカー」とかなり近いものだと感じています。
ただ、厄介なのは、最初の「課題発見が得意」で「発見した課題は解決せずにはいられない」というところです。
今の「普通」の日本のコミュニティで、この発想でバシバシ発言したり行動したりすることは、「空気が読めない人=KY」認定されがちです。

大野さんのFacebook【”変人”がつながる場としてのイベント】

大野さんはアクティブ・ラーニングを早い段階で授業に取り入れ、先生が学びの指針を整理するTPチャートのフレームワークなどにも造詣が深い。近未来ハイスクールの発起人で、変人の一人でもあります。

学校現場にいる大野さんが日頃感じていた課題は、高校生と大人の出会う機会が少ないというものでした。一方、私は周りにいる変人たちがあまりに面白いので、いつか若い人たちとつなげて刺激したいと考えていました。自分の中学生・高校生の子供には既にいろいろな大人に会わせていましたが、それだけではもったいない。

変人たちをみていると、業界(会社の外)では実力を認められ、尊敬を集めているだけど、所属している組織が評価していない、もしくは気づいていないのかな、という状況をよく見かけます。

「変人は組織で孤立しがち」

と大野さんも書いています。

一方、近未来ハイスクールを企画する側としては、逆にここまでいろんな面白スゴイ人が関わってくれるのが、ちょっと不思議でした。最近、なんとなくこうなのかなと背景を想像した内容が大野さんの文章で確信になりました。

近未来ハイスクールは孤立しがちな変人たちに「その仕事っぷり素敵ですね!」と正面から伝えることが喜ばれている。そして変人たちの相互ネットワーク拡大になっている「変人ホイホイ」になっている。

危険を察知している子供たち

「変人」というキーワードで集まっている高校生たちの多くは変人予備軍です。KYとしてはじかれる可能性を薄々感じています。そんな若い人たちは、近未来ハイスクールで出る杭な大人たちに会うことで安心します。自分はまだ大した変人じゃなかった。もっと尖っても良いんだと。

同世代の流行りに興味が持てない高校生は、それを見せないよう気をつける子もいます。アイドルの話題で盛り上がる友達の中では、自分の大好きな古典文学の話はしない、という女子生徒が参加していたこともありました。でも隠していたり、抑えていたら、いつのまにかその杭は丸くなったり、なくなってしまう可能性があります。

巫女になってしまうデザイナーのように。

今年は授業での近未来ハイスクールにも力を入れています。公開講座に来るアンテナのはった生徒だけでなく、学校の中に入り込んで、変人のパワーで眠っている生徒たちも起したいからです。

思わず行動変容したくなる場へ

近未来ハイスクールには、過去の武勇伝を語りたい人(自慢)、高校生に教えてあげたい大人(上下関係)、周りのせいにする大人(愚痴)は登場しないように気をつけています。

いま何に夢中か・これから何をやりたいかをワクワク語る大人、高校生からも学びたい大人が、フラットな立ち位置で対話したり、ファシリテーターとして登場します。

例えば「働くってなんだろう」をテーマに仕事について一緒に考えたり、「高校生と(会社・サービス)を仲良くする方法」などの会社課題や、SDGsのような社会課題を解決する場で議論したりします。

とってもシンプルな仕組みです。「まさに同じようなことをやりたかった」と言われることもしばしばあります。2017年3月からスタートして1年半続けられたのは「変人が集まったら子供も大人同士も面白い」という、力のぬけた動機があるからかな、と思います。

高校生が変化するとともに、大人たちも変わってきています。学部を変えた高校生、建築事務所から独立した建築家、マーケティングの専門家から大学の先生になった人、一つの企業に所属するのではなく複業家になった人。どの人も、より自分に合った、もしくは自分が目指した環境に前進しています。

効果は5年後、10年後だろうと思っていたこの活動が、意外と早く一歩を踏み出す後押しができているは嬉しい誤算です。というか、むしろ大人のほうが変化してるし、変化が早いし。

個人の蒐集家のコレクションから始まった近未来ハイスクールですが、変人の広がりは私のネットワークだけでなくなっています。変人の友達は変人だからです。

ときどき「いやあこれ以上前に進めるかな〜」と思うこともあるのですが、今度は変人から励まされます。そして、近未来ハイスクールを、いい意味でよってたかったより良いプラットフォームに洗練し、広げていこうとしてくれる変人たちがいます。近未来ハイスクールそのものも、変化は当面止まらなそうです。

大野さんのFacebookの記事の返信的な感じで書いてみたら、つい長くなってしまいました。

近未来ハイスクール 小林